2018年度 理事長予定者 所信
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IMAGINATION
~思いやり溢れる仙台(まち)の創造~
【はじめに】
仙台青年会議所(以下、仙台JC)は、「戦後の荒廃した郷土の再建は、私たち青年の使命である」との強い気概と覚悟を持ち、全国で11番目の青年会議所(以下、JC)として1951年に誕生しました。以来仙台JCは、地域のリーダーとして未来を見据え、地域の抱えている課題の解決に向け、まちやひとの「しあわせ」に繋がる事業の実施や政策提言を行い、市民へ意識変革を促し、地域発展に取り組んでまいりました。
JC運動は、一人の心を動かし、その一人がまた一人の心を動かすことで、社会を動かす大きな可能性を持っています。私は、運動の広がりを生み出すためには、相手の立場で気持ちを推し量る想像力が必要だと考えます。これを言ったらどう相手が思うか。このような行動を取ったらどんな影響を及ぼすのか。相手の感情や状況を踏まえ、互いの心に寄り添い考えなければなりません。私たちの社会は、価値観の異なる人々で構成されており、互いに共感し合うことは、明るい豊かな社会を創造していくために重要なことです。想像力を高めて思いやりを持ち、相手に寄り添い行動することで、人財や組織、そして地域が成長し、希望に満ちた仙台を実現できると確信します。
本年は、私たちメンバー一人ひとりが、まちやひとの「しあわせ」を実現できる運動を展開し、仙台JC中長期ビジョンが掲げる、しあわせを共感できる仙台の実現に向けて、多くの市民とともに新たな一歩を踏み出します。
【変革を促す力の創出】
私たちが行うまちづくりには、市民から「共感」を得ることが重要です。市民に対して、仙台JCが何をめざしている団体なのかを明確にし、メンバー一人ひとりが「想い」と「戦略」を持ち、伝えたい相手にきちんと伝わるように運動を展開し、仙台JCのブランディングを推進する必要があります。そして、社会奉仕団体や青年団体が数多くある中で、JCとしての独自性や魅力を発信し、市民や地域に必要とされる団体にならなければなりません。
まずは、私たちが、自己研鑽を繰り返すことで成長し、この地域が抱える課題に対し、JC運動がより広く市民の理解と賛同を得られるように発信力を高めます。そして、地域発展をめざす団体として存在意義を示すとともにさらなる信頼や信用を重ねていくことで、共に行動していく多くの理解者を増やす必要があります。さらに、私たちが発信した情報に共感し、市民一人ひとりが当事者意識を持つことで、未来へ向けたまちづくりに積極的に参画する意識を高めます。また、世界中にネットワークを持つJCというスケールメリットを活かした地域活性策を導き出します。そして、地域に存在しているJCだからこそできる地域活性化策の実態を把握し整理することで、まちづくりへの成功要因や工夫を検証します。
JCが行っている世界規模の大会や会議の中には、各地域や国の代表が集まり、国際レベルで活躍するリーダーとなるためのトレーニングを行い、自分の地域や国に留まらない発展や世界平和を確立することを目的とした国際アカデミーや全世界から一万人以上のJCメンバーが集まり、議論を交わす最大の国際会議である国際青年会議所(以下、JCI)世界会議があります。これらの各種大会では、全国のみならず世界中のメンバーが訪れることで発生する経済的波及効果や、一般向け公開プログラムの開催や地域イメージの向上などによる社会的波及効果も期待されます。JCが主催する大会などを開催したことで、その地域にどのような影響を与え、さらなる発展を遂げたのか過去の事例を調査研究することで、新たな仙台(まち)の価値を見出します。
地域が必要とする未来を見据えた運動を推進し、仙台(まち)の可能性を追求することで、市民一人ひとりが、希望に満ちた未来を描ける仙台を創造します。
【未来に向けた災害に強いまちづくり】
仙台JCは、震災を経験した地域で活動しているJCとして、復旧・復興を成し遂げ、子どもたちの笑顔が溢れた地域を取り戻すという気概を込め、2011年に「IMAGE 2021’S SENDAI」というフラッグを掲げました。その後、世界中からいただいた支援に対し感謝の想いを発信する事業として「キャンドルナイト」、防災・減災意識の向上と震災の風化防止を目的とした「黄色いハンカチプロジェクト」を実施しております。
東日本大震災から7年目を迎え、目に見えるものの復旧・復興は着実に進んでおります。時間の経過とともに日常を取り戻してきた今だからこそ、震災を経験した私たちができる未来へ向けたまちづくりを推進しなければなりません。そして、災害に対する意識を高め、地域事情に応じた災害対応をあらかじめ想定し、地域の特性を考慮した防災対策を進める必要があります。そのために、私たちは地域のリーダーとして、今後起こりうる災害に対し、地方公共団体が行う「公助」、市民一人ひとりが取り組む「自助」、力を合わせて助け合う「共助」が盛り込まれた防災・減災対策を市民に提示します。
本年は、東日本大震災の教訓を踏まえ、日頃からどのような対策を取れば、被害を最小限に抑えられるか、また家庭や企業における災害に備えた備蓄品や対応意識の再認識、各家庭でも活用できる新しい自主防災の取り組み方法を発信します。2015年に仙台市で開催された国連防災世界会議において、採択された世界の防災戦略指針「仙台防災枠組」の発信地として、今後予想される国内の被災地域、そして全世界に向けて、防災啓発の活動を推進することが重要です。震災後、私たちJCと連携してきた関係各所との活動を検証し、被害軽減を図る「公助」、危機管理を高める「自助」、防災組織の構築を行う「共助」のバランスの取れた黄色いハンカチプロジェクトに進化させ、市民一人ひとりの災害対応能力の向上を促します。
市民一人ひとりが、危機意識と危機管理体制を強化し、災害に備える地域を構築することで、思いやり溢れる防災・減災に強い仙台を実現します。
【愛され続ける仙台(まち)のシンボル】
仙台七夕花火祭(以下、花火祭)は、1970年に仙台七夕まつりの前夜祭として次代を担う子どもたちを対象とした「ぼくとわたしのお祭り広場」にて実施し、市民意識の高揚と仙台(まち)の活性化をめざして、長らく市民に親しまれてきました。私たちは、今まで以上に市民が地域愛を育み、さらなる地域発展を遂げ、新しい仙台(まち)を創造するために、主催者として花火祭を次なるステージへ進化させる必要があります。
近年、西公園一帯の開発が進み、花火打ち上げ場所による保安距離の確保や警備エリアの変更、警備費の高騰に伴う打ち上げ費用の増加が余儀なくされています。私は、市民の仙台(まち)を愛する心を醸成するために、花火祭について市民・協力企業を含む他団体や行政とともに新たな組織を構築する時期であると考えます。そして、初の想いや背景、現在求められている状況などを鑑み、私たちは花火祭を取り巻く環境が変化してきたことへの対策と持続可能な最善の方法を導き出します。
本年は、花火祭の開催に向け、関係各所とともに業務分担や協力体制などの協議を進め、地域資源の保全と市民の意識向上に向けた組織体制を構築します。そして、市民に愛され続ける仙台(まち)のシンボルとして地域愛が育めるような市民と仙台(まち)に必要とされる花火祭を開催します。
未来のことを見据え開催された花火祭によって、地域愛を育んだ市民とともに地域の魅力を高め、ローカルアイデンティティーの確立された仙台を実現します。
【想像力による地域資源の活用】
東北地方で唯一の政令指定都市である仙台市は108万人の人口を擁し、仙台市を中心市とする都市圏を形成し、東北の中心的都市として発展してきました。また、仙台七夕まつりや仙台・青葉まつり、定禅寺ストリートジャズフェスティバル、SENDAI光のページェントなどのイベント、野球やサッカーをはじめとするプロスポーツの振興、文化財や民族芸能なども多数存在している魅力溢れたまちです。しかし、私たちの地域は、今後5年程度で人口減少局面に転じ、およそ30年後には人口が100万人を下回り、2060年においては、人口は89.1万人へ減少される見通しです。※1 人口の減少によって、生活に必要な商品やサービスを入手することが困難になり、生活利便性や地域の魅力が低下するといった多くの問題が発生し、さらなる人口減少へと繋がる悪循環へと陥ってしまう可能性があります。また、交流人口についても、東北地方は全国的なインバウンド急増の流れから大きく遅れ、外国人宿泊者数の全国シェアは1%に留まっております。そして、東北地方のインバウンド需要は、2015年にようやく震災前の水準に回復したものの未だに急成長を続ける全国的な流れからは大きく取り残されています。人口減少という危機が直面している中、地域社会が活力を維持し、地方創生を実現するために、私たちは将来を見据えた地域を構築しなければなりません。
前年比数十%の伸び率で増加を続け、政府が2030年に3,000万人を達成させるとの目標を掲げている外国人観光客の来訪は、地域に大きな財政基盤を生み出す絶好の機会となっています。過去最多の伸び率で増加を続けているインバウンドの増大をさらに加速させるためには、地域の特徴や特色を最大限に引き出せるよう長期間滞在しながら地域の資源を活用した活性化策を発信していくことが必要です。そして、私たちの愛する地域を発展させるために、地域協働による観光地域づくりや情報の発信により地元特有の伝統や文化、産業や経済などを次世代や地域を訪れる方々に繋げなければなりません。
本年は、関連諸団体とともに一つの地域資源だけではなく、様々な資源を組み合わせることで、経済的、社会的な循環が生みだされ、市民と観光客が楽しさや感動を共有することができる新たなロールモデルを提唱します。
地域が一体となり、地域資源の可能性を高め、独自の魅力を確立させることで、持続可能な都市仙台を実現します。
【未来を担う子どもの育成をめざして】
私が、日本JCで委員長として活動した際に、スポーツを通じて道徳心を持った自立した人財を育むことを目的とした事業を実施しました。スポーツは、体を丈夫にするだけではなく、目標に向かって努力する意欲を養い、仲間意識や責任感、犠牲的精神やリーダーシップ、そして社会性といったものを育む非常に価値あるものだと思います。しかし、勝負事であるあまり勝利至上主義が蔓延してしまっていることが懸念されます。スポーツでは、「勝ち」が至上の目的であり、言い換えれば「負け」が同時に存在します。それにより、
どんなことをしても勝てば良いという誤った意識を生んでしまう恐れがあります。子どもたちにとって最も重要なことは、勝者は敗者を思いやり、敗者は勝者を称えるという互いに対する敬意なのです。
少子化や核家族化などで地域社会の交流が希薄になり、インターネットやテレビ等を介して感覚的に学びとる「間接体験」の機会が圧倒的に多くなった今、子どもたちの成長にとって負の影響を及ぼしていることが懸念されています。私は、これからの子どもたちに重視されなければならないのは、ひとやものに実際に触れ、かかわり合い、他者を思いやる心や感動する心など、社会生活に必要な人間性や社会性を育む「直接体験」だと考えます。
本年は、子どもたちに対し、成長の糧となり、人間性や社会性を育む基礎となっている体験活動の機会を提供することで道徳心を養います。
子どもたちが、実際に自ら体験することで得た知識や考え方をもとに、互いに感謝と敬意を持つ、心豊かな子どもを育む仙台を実現します。
【想像力溢れる人財の育成】
JCは、20歳から40歳までの限られた中で活動する組織です。近年、入会時期の晩年化が進み、活動する年数が短い会員が増加しており、気づきや学びが得られる機会の減少が懸念されます。私たちが思い描く仙台(まち)を実現するためには、地域を牽引する人財が必要であり、JCという団体の特徴や特色を理解し、運動を展開することで成長を促す多くの機会を得ることが必要です。
私は、多くの青年世代の若者に、様々な経験や仲間と出会えるJCを知ってもらい、限りある時間を共に行動したいと思います。それは、JC活動を通じて「ひと」として成長できると確信しているからです。そのために、会員拡大だけに捉われた運動をするのではなく、JAYCEEとしての立ち振る舞いや地域との協働により社会の発展に貢献していけるJC運動の内容に関心を持ち、入会いただくことが大切だと考えます。
本年は、仙台JC独自の新人研修制度をより充実させ、これからのまちづくりに求められる「個」の能力を最大限に引き出すトレーニングを行います。
JCという青年の学び舎に集った新たな仲間とともに、想像力豊かな運動を展開していくことで、JCの存在意義を確立し、地域のリーダーとなりえる人財を育成します。
【新たな価値観の創造】
仙台JCは、JCIアジア太平洋地域会議仙台大会(ASPAC仙台大会)や仙台七夕花火祭などの様々な事業を開催し、環境、スポーツ、文化、情報など多くの分野において政策提言を行ってきました。そして今なお、先輩諸兄が築きあげられてきた関係各所との協力体制や様々なネットワークにより、私たちの活動のフィールドが広がっています。仙台JCは、66年という長い年月をかけて歴史と伝統を連綿と受け継いでまいりました。私たちも、未来の仙台(まち)のために、次世代にバトンを渡し、繋げていく必要があります。
これからもJC運動を展開していくためには、メンバーの使命感や責任感、連帯感が重要であり、メンバー一人ひとりの資質向上に取り組まなければなりません。私たちは、JAYCEEとしての立場、青年経済人としての立場、親としての立場など、様々な立場に置かれています。私は、メンバー一人ひとりが今置かれている立場を理解し、自ら率先して行動することで、地域に貢献できる人財へと成長していくと確信しております。
本年は、仙台JCの歴史や伝統を引き継ぎつつ、「ひと」としての資質を高めることができる団体をめざします。そして、JCメンバーの想像力を向上させ、品格ある青年としてさらなる成長を遂げ、互いに絆を深めることで地域を牽引する力を身に付けます。
JCを通じて資質を高めた私たちが、JCで学んだ経験をもとに、培った力を発揮することによって、地域発展に寄与し、活気溢れる仙台を実現します。
【おわりに】
想像力が溢れるまちは、思いやりに溢れています。
相手の考えを想像し、相手の気持ちを理解しようとする。そして、相手の想いを想像し、相手の心に寄り添って共感しようとする。この思考のプロセスから生まれる言葉や行動だからこそ、本当に伝わるのです。
互いの心に寄り添い、共に行動する、相手への思いやり。
地域愛を育み、地域の活性化に繋げる、地域への思いやり。
誰もが笑顔溢れる未来をめざす、未来への思いやり。
そして、自分自身を受け入れ、自己成長を促す、自分への思いやり。
本年度の仙台JCは、想像力を高め、一人ひとりが互いに心を寄せ合い、思いやり溢れるしあわせを共感できる仙台の実現へ向けて運動を展開します。
※1「仙台市まち・ひと・しごと創生総合戦略」参照