2017年度所信
公益社団法人仙台青年会議所2017年度 理事長 松井 佑介
やさしく、強く
~未来に伝えるメッセージ~
はじめに
「利他の精神で積極的に地域やひとのしあわせを考え、能動的に行動できるJAYCEE」これは、震災から10年後の2021年へ向けて、しあわせな未来を思い描き行動し、仙台が理想とするまちへと復興を成し遂げ、明るい豊かな社会の実現へと導くために策定した「LOM中長期ビジョン」の一文です。私たちがめざす仙台は、しあわせな未来の仙台を実現することであり、一人ひとりが感謝と思いやりの心を持ち、能動的に行動することが必要です。
私は、2011年に発災した東日本大震災において、自らが物資困窮した過酷な状況のなかでも他者を思いやり、分かち合いながら命を繋ぎ生き抜いている姿に、やさしい強さを見ました。「やさしさ」とは、相手の立場を尊重する思いやりの「心」であり、「強さ」とは、お互いを認めながら励まし合い、助け合いながら力強く「行動」することです。このやさしさと強さを持った行動は、私たちが理想とするまちへと復興を成し遂げ、震災以前よりもしあわせな仙台が実現できると確信します。
私たちは、やさしさと強さを兼ね備え、一人ひとりがしあわせを思い描き、未来へ向けて能動的に行動することにより、LOM中長期ビジョンが掲げる2021年の希望に満ち溢れたしあわせを共感できる仙台を実現します。
未来のために伝え続けること
私たちの住み暮らすまち仙台市は、東日本大震災で多くの人命を失い、甚大なる被害を受けました。震災を経験して生かされた私たちは、悲しい想いを繰り返さないように、やさしさと強さを兼ね備えた防災・減災に強いまちづくりを推進することが必要です。
仙台JCは、2012年から震災の風化防止や発災直後に世界中から受けた多大なる支援と生かされた命に感謝する「キャンドルナイト」を市民とともに実施してまいりました。そして、2014年からは、防災・減災の取り組みが進んだまちを実現するために「黄色いハンカチプロジェクト」を展開しております。この取り組みは、災害などの有事の際、各々が自宅外の目立つところに黄色いハンカチを掲げ、「我が家は大丈夫」という意思表示をすることで、地域の人々がお互いの安否確認を迅速に行うことができます。本年度は、この運動を未来へと伝えるために、3月11日に市民とともに発信します。さらに、震災を知らない世代を作らないために、仙台市の子どもたちを対象として、震災で得たやさしさと強さを学校単位で広め、未来へと伝えていく運動へと進化させます。
この運動を通して、防災・減災に強いまちが生まれ、決して震災を風化させず、生かされていることに感謝の気持ちを持って行動する、やさしい強さ溢れるしあわせを共感できる仙台を実現します。
やさしい強さを持って未来の花火祭へ
1970年に始まった仙台七夕花火祭は、本年で48回目を迎えます。これまでも、開催に向けて市民・企業・行政など多くの方々がお互いの立場を尊重し、協力しながら安全でクリーンな花火祭を開催してまいりました。これからもしあわせな仙台を創造するために仙台七夕花火祭を未来へと伝えることが必要です。
この事業をはじめた当時は、仙台七夕まつりの前夜祭として8月5日の夜空に花火を打ち上げることで、まちを活気づけたいという想いがありました。昨今の仙台七夕花火祭は、長年開催していた場所での打ち上げが困難になり、2014年から東北大学の敷地の一部をお借りしているのが現状です。打ち上げ場所の変更に伴い、警備計画の複雑化や人件費、警備資材の高騰、周辺の養生費などの問題が山積しております。本年度は、創始の想いを胸に、私たち一人ひとりが、未来のしあわせを共感できる仙台を具体的に思い描く花火祭を開催します。そして、継続へ向けた今後の方向性を市民・企業・行政と連携しながら未来の仙台七夕花火祭を思い描く協議会を設立し、新たな可能性を模索しながら、やさしい強さ溢れる心を広げてまいります。
仙台七夕花火祭を通して、一人ひとりが仙台のしあわせな未来を創造し、まちを思いやる「やさしい」心と、お互いが協力して未来へ継承する「強さ」ある行動により、しあわせを共感できる仙台を実現します。
世界に誇れる仙台の実現
日本では、全国的に人口減少が課題になっており、その中でも生産活動の中核を担い、労働意欲が旺盛であるとされる「生産年齢人口」世代の人口減少が問題とされています。仙台市でも同様に、2040年までに現在より生産年齢人口が約8%減少するという統計が出ており、若者の労働人口が減ってしまえば、そのまちの地域経済が縮小し、衰退していく可能性が高くなります。
仙台市では、強い地域経済を育てていくために、インバウンドの取り組みを推進しています。これは、観光客などの交流人口を拡大させ、人口減少の影響を緩和する活発な地域経済を取り戻そうというものです。昨年の7月に仙台空港が全国初の民営化となり、今後は交流促進協定を結んでいる都市との定期便就航や、LCCなどの国際線増便により海外との交流が促進すると予想されます。
本年度は、交流人口を増やすために、仙台の若者が交流促進協定を結んでいる都市の若者と交流をする機会を創出します。仙台のファンを作るために、若者や行政・企業などと連携して、自然や文化、サブカルチャーなど観光の魅力となるものを調査研究し、海外の若者にこのまちの魅力を体感していただきます。また、海外の若者が考える仙台の魅力も取り入れ、新たなまちの観光資源を発掘します。そして、仙台の若者が再認識したまちの魅力を海外に発信することで、仙台に行ってみたい、と思う海外の若者を生み出すことに繋げます。さらに、若者同士がお互いの国を思いやる相互理解の関係性が未来まで継続する取り組みを実践します。
お互いを思いやるやさしさと歩み寄る姿に強さが生み出され、やさしい強さ溢れる心を持った若者の行動力で強い地域経済を取り戻し、相互理解溢れる若者により、しあわせを共感できる仙台を実現します。
強くやさしい心を持った青少年の育成へ
子どもたちは、地域社会で様々な体験を通して社会の一員であることを自覚し、家庭や学校だけでは身につけることのできないルールや社会規範を学びます。しかしながら現代では、子どもを取り巻く環境や価値観の変化に伴う地域コミュニティの希薄化により、共助の精神が薄れている現状があります。未来を担う子どもたちへ共助の精神を養うために、子どもを持つ親や大人がこれまで以上に子どもと深い繋がりを持つことで、子どもたちが社会でたくましく生きていくために必要なお互いを考えるやさしさと、助け合いながら行動する強さを身に付けることが必要です。
本年度は、これまで仙台JCが展開してきた学校・家庭・地域が連携した運動をより強く推進していくために、学校を基軸として地域の人々が子どもたちと繋がりを持てる機会を創出します。地域の人々の様々な視点により、子どもたちは、生きるために必要なことを学ぶことで、自分が地域社会に必要な存在であり、誰かの支えとなり、自分も誰かに支えてもらいながら生きていくという自己肯定感を身に付けることができます。自分の存在意義を知った子どもたちは、自分に自信が生まれ、生きる力が備わります。子どもたちがこれから生きていくうえで、地域の人たちと助け合い、お互いの立場を尊重し、支え合いながら生きていくという共助の精神が育まれる運動を展開します。
子どもが相手を思いやるやさしい心を育み、他者と助け合いながら社会をたくましく生きる強さを身に付け、子どもたちがしあわせな未来を思い描くことにより、希望に満ち溢れたしあわせを共感できる仙台を実現します。
地域を牽引するリーダーとして
JCは40歳までの限られた時間の中で活動する組織であり、JC運動を未来の仙台へ繋げていくためには、常に新しい会員を迎え入れる必要があります。会員の減少は、私たちが展開する運動の推進力が低下すると同時に、しあわせを共感できる仙台を実現するために必要な、地域を牽引するリーダーの減少にも繋がります。私たちJCは、地域の発展に寄与することが使命であり、これからも仙台を発展させる真のリーダーを育成する会員の拡大が必要です。
会員の拡大は、JCの基本運動とも言われており、新しいメンバーを拡大するためには、私たちが新たな同志となるメンバーに対して仙台の発展のために情熱を注ぎ、ひたむきに活動している姿勢を感じ取っていただき、JC運動で得た学びや気づきをメッセージとして届けることが必要です。本年度は、新たな仲間を迎い入れるために、仙台の発展に向けて活動している若者に対してJC運動に共感してもらい、心の琴線に触れるアプローチを積極的に行います。そして仙台JCメンバー全員が、これまで以上に会員の拡大に関わる新しい取り組みを行います。このまちをより良いものにしていくことは、私たちJAYCEEの使命であるというメッセージをメンバー一人ひとりに対して強く発信し、共感を得ることにより、新たな仙台を創造する組織へと進化します。
新しい仲間が、JC活動を通じて相手を思いやる「やさしい」心を醸成し、能動的に行動する「強さ」を備えた真のリーダーとなり、力強くJC運動を推進することにより、しあわせを共感できる仙台を実現します。
しあわせな未来の世界を思い描く
2002年に開催したJCI ASPAC(アジア太平洋エリア会議)仙台大会では、「Happiness SENDAI!」のスローガンのもと、真のしあわせを追求し、人と人とのつながりによる世界平和を実現するために開催されました。近年では2015年3月に開催された第3回国連防災世界会議や、昨年5月に行われたG7仙台財務大臣・中央銀行総裁会議の開催など、仙台市は国際会議の誘致を強く推進しています。仙台市が国際コンベンション都市として飛躍し、新たなまちづくりを推進するために、私たちが掲げる2021年のしあわせを共感できる仙台を実現し、恒久的な世界平和実現のための運動を展開する必要があります。
仙台JCでは、お互いを思いやる心が溢れる世界を築くために、震災復興への感謝の想いや、災害に強いまちづくりを世界に発信する国際会議の創出に取り組みます。そのためには、民間外交の担い手である私たちが、これまで以上に海外の姉妹JCと積極的な交流を行い、絆や友情を深めるとともに、仙台市と友好関係にある都市との新たな繋がりを構築してまいります。昨今の政府間の国益が優先される外交により国同士の関係性が行き詰まる一方で、私たちが掲げる恒久的世界平和に向かって進むためには、JCIの国際的なネットワークを活かし、民間レベルで各国との関係強化を図ることが大切です。本年度は、しあわせな未来を思い描く運動をより強めていくために、新たな絆を構築し、その交流から得られる経験を組織の国際力強化に繋げます。そして、国際の視点で行動できる担い手を育成し、次世代を担う若者がともに学び、友情を育む機会を創出することで、仙台JCの大きな財産となり、未来へ繋がる組織へと進化します。
未来ある若者がお互いを思いやるやさしさと相手に歩み寄る強さの行動により、しあわせな未来に繋がる絆が生まれ、お互いの国のしあわせな未来を願う心溢れる人たちがしあわせを共感できる仙台を実現します。
人に伝える力が試される時代へ
社会を変革していくためには、発信する情報が世の中を変革するにふさわしい内容になっているかを検証し、対外発信力を強化しながらも、社会的認知度を向上させていかなければなりません。発信する相手に共感してもらうために、JC独自のブランディングを行い、私たちが展開する運動を市民へと伝え、しあわせを共感できる仙台を実現することが必要です。
仙台JCの未来へ繋がるストーリーを描くために、私たちが展開する運動の価値を高め、市民に共感をいただくことで、能動的市民を生み出し、仙台JCのブランド力を向上させます。ブランディングは仙台JCが今後発展していくための生命線と捉え、本年度は仙台JCブランディング年間と位置づけ、未来へと伝えてまいります。そして、新たな会員の獲得のためにも、JCのネームバリューを高め、私たちの運動に興味関心を抱いてくれる若者を増やすことが重要です。また、私たちが行った運動がどのようにこのまちに波及して、市民の意識を変えたのか、今後どのような事業構築が必要なのかを検証することで、未来に繋がる組織に発展させます。
さらに、私たちの展開する運動を認識してもらうためには、効果的な情報の発信や仕組みづくりが必要です。私たちが発信する情報を受け手に確実に届けるために、JCでしかできないブランディングされた独自の運動を効果的に発信し、共感を得ることにより、情報としての価値が生まれます。また、確実に相手に情報を届けるために、新聞、雑誌、ラジオ、テレビなど発信力のあるメディア媒体に加え、SNSやその他情報発信ツールを組み合わせるクロスメディア戦略を行います。そして、私たちの価値ある運動とJCのネットワークで賛同いただいた発信力のある人たちや広報媒体との連携によって、相乗効果による共感を生み出します。
JC運動を通して向き合い歩み寄るやさしさと、組織の価値を高める強さ溢れる活動が、ブランディングしたJCと、それに共感した市民とともに、このまちの未来へ伝えるメッセージを発信し、しあわせを共感できる未来の仙台を実現します。
むすびに
私たちが思い描く仙台は、「やさしい強さ」で溢れています。
地域の人々がお互いを思いやり、防災・減災に強いまちに取り組む「やさしい強さ」
市民一人ひとりが、仙台の未来を創造する「やさしい強さ」
若者同士が相手を思いやり、まちを活性化する「やさしい強さ」
子どもたちが、共助の精神を学び自立する「やさしい強さ」
世界との友情を大切にし、たくましく行動する「やさしい強さ」
私たちが考えるやさしい強さは、相手に寄り添う思いやりの心で生まれる「やさしさ」であり、誰かのために率先して行動することで生まれる「強さ」であります。
本年度の仙台JCは、一人ひとりがこれからの時代をたくましく生きるために、私たちが具体的な未来を思い描きながら積極的に行動する、やさしい強さを未来へ伝えるメッセージとし、希望に満ち溢れたしあわせを共感できる仙台の実現へ向けて運動を展開します。