Stand Out!
~次世代がより豊かになる仙台(まち)へ~

公益社団法人 仙台青年会議所
2021年度 理事長
菅原 啓太

はじめに

数ある地域の中でも持続可能な都市として、世界中から手本とされ信頼を得ている。経済発展と文化の進化と継承が相乗効果を生み、好循環を齎している。経済や人の流れが集積し、地域文化の振興方策を講じて活気に満ちている。生まれ育った土地に誇りを持ち、未来を見据え行動する人で溢れている。大人たちは、地域の宝である子どもたちの成長を心から願い、未来を担う人財の可能性を無限大に広げている。私たち青年世代の熱意と行動力が、地域を発展させるエネルギー源となり、明るい豊かな社会の実現に向けて推進力を増幅させている。私は混迷を極める時代にある今だからこそ、このような仙台(まち)の未来像を描いています。

令和という希望ある時代は始まったばかりです。しかし、私たちが直面している現実は冷酷です。新型コロナウイルスのパンデミックは、世界規模で様々な危機的状況を引き起こしながら、依然として私たちの生活に甚大な影響を与え、時には生命にとって脅威となっています。このような不確実性の高い時代だからこそ、私たちは創始の精神と歴史の恩恵に与っていることを今一度噛みしめ、責任世代として積極的に行動していくことが必要です。

仙台(まち)の次代の責任を担い、地域の発展を牽引する存在となるには、確固たるビジョンを持つことが重要であり、確固たるビジョンは私たちの実体験から生まれるものです。実体験に基づき、慣例にとらわれない画期的なビジョンを掲げ、私たちが一つの方向に向かって動き出すとき、仙台(まち)の未来を築くことができると信じています。

【会員が最も価値を感じられる組織への進化】

新型コロナウイルス感染拡大について、WHOは「100年に一度の衛生上の危機」と声明を出すほど、その影響は深く長期的なものになっています。仙台青年会議所(以下、JCI仙台)の会員には社業に大きな影響を受けている方もおり、「JCどころではありません」と訴える声も少なくありません。しかし、歴史とネットワークを積み上げてきた青年会議所には、この状況を打破する術が整っているのです。私たちは時代の趨勢を見極め、会員が最も価値を感じられる組織へと進化する必要があります。

「新日本の再建は我々青年の仕事である」との志から始まった青年会議所運動は、地域のため、子どもたちのために尽くすことが、地域の未来を切り拓くという諸先輩方の想いがあって成り立っています。次世代の責任を担う私たちは、地域のために行動し続ける組織として、原点に立ち返り、何を成すべきかを見極めることから行うべきです。そして、時代の移り変わりと組織本来の存在価値を照らし合わせ、これからの青年会議所の姿を確立することが必要です。本年度は創立70周年を迎えるにあたり、組織の歴史を振り返り、私たちが積み上げてきたものを後世に価値ある財産として引き継いでいきます。

社会の変化によって、地域を牽引する人財に求められる能力が多様化し、世代や場所を問わず地域発展に関わる機会が無限に広がる今、新しい時代の革新的な青年会議所運動を創り出すことを迫られています。私たちは歴史の節目にあたり組織の本質を理解するとともに、時代に即した組織の在り方を見出します。

仙台(まち)の未来を力強く牽引する地域人財を絶えず育み続ける私たちJCI仙台が、時代に即した進化を遂げ、地域社会の持続的発展を牽引するトップリーダーとして、地域に対して発言力を持って行動することが、より良い仙台(まち)の未来を築くと信じています。

【新しい時代の青年会議所】

現代は、テクノロジーの進歩によって、人・モノ・情報がボーダーレスに移動することが当たり前の社会となっています。私たちの周りには資源が溢れ、適切な取捨選択を自己判断で行わなければいけない時代です。市民一人ひとりの倫理観が問われる今だからこそ、私たちは地域発展と共に人財を育んできた青年会議所として、未来への方向性を示す必要があります。

JCI仙台では、しあわせを共感できる仙台の実現に向けてLOM中長期ビジョン(※1)を行動指針として定めることにより、事業とビジョンの関りを示すとともに、目指すべき方向性を会員が共有しながらビジョンに沿った事業を展開しています。しかし、近年は在籍年数の短期化や啓蒙活動の不足により、ビジョンの一部形骸化が見られるのが現状です。本年度は時代の変化を鑑み、組織としての新たなビジョン策定を見据えた調査研究を行います。JCI仙台の目指すゴールを明確化することで、これまで以上に組織の結束力を高め、地域に持続的なインパクトを与える組織に進化します。

青年会議所にとって、継続とは手段であると私は理解しています。活動の本質は何のために行うのかということです。その問いに対する一つの考え方として、SDGs(持続可能な開発目標)は優れた指標となります。JCI仙台はSDGs普及啓発と、地域の国際化や持続的発展に向けた協働宣言を仙台市と結んだことから、本年度も全ての運動と事業にSDGsを結び付け力強く推進していきます。

青年会議所の価値を高め周囲に好循環を齎すために、先人たちの知恵と会員の英知を活かすとともに、JCI仙台の方向性を見出し、持続可能な豊かな仙台(まち)の実現を目指します。

【人を磨き、地域を豊かにする】

新型コロナウイルスのパンデミックによって国際交流の在り方が問われる中、ICTの活用により海外との距離感は一層縮まっています。国籍を超えた交流の最大の魅力は、新たな価値観の発見にあります。インプットとアウトプットの連続が、異文化の理解だけでなく、自国の文化を見つめ直すことにもつながります。

青年会議所は国際組織であり、今や世界128の国と地域に国家青年会議所が存在するまでに広がりました。組織が有するグローバルネットワークのもと、世界各国の青年会議所リーダーが集まる国際事業は、世界から集まる同志に地域の印象について本音を聞ける機会となり、開催地の青年会議所会員、ひいては市民にまでパラダイムシフトを起こし、市民主体による地域の魅力や文化の発信につながります。また、事業参加者にとっては自身の価値観に大きな変化が生まれる経験となり、地域の国際化を推進するうえで必要な視点を養う機会となるのです。また、2021年度は東日本大震災から10年を迎える年でもあります。私たちには、「仙台防災枠組2015-2030」の採択都市の一員として、ハード整備だけでなく市民が主体となる防災・減災の取り組みを世界各国の方々に伝え、それぞれの地域における危機管理に活かしてもらう機会を創出する使命があります。国際交流の方法がより一層多様化する時代に、新たな地域の魅力の発信方法と相互理解の在り方を、私たちが中心となって創造します。

人は人によって磨かれ、国や人種を超えた交流が加われば、人は加速度的に成長します。国際化に対し主体的に関わりを持つ地域を創り上げるには、国際的な視点を持つ未来を担う人財を育てなければなりません。時代の移り変わりの中で、新しい国際交流の形を私たちが示すことによって、新たな地域の価値を創造し、豊かな仙台(まち)の未来を築けると信じています。

【未来を照らす時が、世代を超えて愛される仙台を創る】

半世紀続く仙台七夕花火祭は、開催を重ねるごとに観客数が増加し続けており、現代では約45万人が訪れる夏の風物詩として、まさに世代をつなぎ、仙台(まち)をつなぐ時となっています。

一方で、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、これまで可能とされていたことが突如として不可能になる時代となり、歴史を積み重ねてきた仙台七夕花火祭も、例外なく形を変えることを余儀なくされました。困難は時代ごとに必ず訪れるものであり、今まさに終わりの見えない暗闇の中を私たちは歩いています。しかし、明けない夜はありません。月の光で照らされた一本道を、地域のために確固たる信念をもって突き進むことが大切です。市民から発せられた、仙台七夕花火祭を渇望し、地域の文化として大切にする声に耳を傾ければ、私たちがすべきことが明確になるはずです。如何なる社会情勢においても、私たちが様々な垣根を越えて連携し行動を起こすことで、市民の意識が変わり希望を見出すことにつながります。

私たちは地域の過去と未来をつなぐ歴史の一点として、仙台七夕花火祭を開催し、闇を照らす月の如く社会に一つの道を示し、魅力的な時を創ります。そして、次世代が描く仙台(まち)の未来像をつなぎ、真に市民が愛する仙台(まち)を後世に亘って創造します。

【地方から旋風を起こす】

仙台市の人口は1995年には97万人でしたが、その後、大きく増加を続け1999年には100万都市となり、東日本大震災後の人口増加も相まって現在では109万人に達しています。しかし、2020年をピークに人口は減少局面に入ると見られ、人口構成については更なる年少人口の減少と高齢化が見込まれており、30年後には100万人を下回ると予測されています。特に、仙台は学都と言われながらも、学生が地域企業に対して魅力を感じる以前に深く知る機会がなく、就職希望先となる企業が少ないため、人財を地域に留められず、首都圏へと転出する若年層が増加傾向にあります。このような人口流出という危機に直面し、私たちはこの地域で育ち好循環を生み出す人財を増やし、未来を見据えた仙台(まち)を創造していく必要があります。

仙台市は東京との短時間での往来が可能であり、市内には地下鉄が整備され、陸路や空路、交通機関やインフラが整う地方都市です。市民が外に飛び出す環境が備わり、人・モノ・情報が集まりやすい恵まれた地域となっています。また、仙台市は経済成長戦略2023の中において、「東北の豊かな未来を創る『ソーシャル・イノベーション都市・仙台』」として起業支援や新たな産業創出に向けた動きを活発化させています。さらに、リモートワークや在宅勤務など既成概念に捉われない働き方が増える中で、必ずしも首都圏での生活が魅力的とされる時代ではなくなっています。

本年度は、地域に潜在する様々な可能性を見出し、次世代を担う人財に対して、仙台(まち)の未来を自分たちが創っていくという責任感を醸成します。そして、仙台発のイノベーションを加速させ、地方の経済成長を牽引する都市として私たちが旋風を起こすとともに、恵まれた地域環境を最大限に活かし、更なる好循環を生み出すことによって、豊かな仙台(まち)の未来を築きます。

【仙台(まち)の未来を牽引する人財の育成に向けて】

全国的に見ても仙台市は、いじめや不登校児童の発生件数が高く、人間関係の問題が多く取り上げられています。家庭から一歩出れば、子どもは友人と切磋琢磨し、同年代だけでなく様々な大人に触れ、社会の荒波に揉まれています。私たちは、子どもが社会の中でたくましく生きるために、豊かな心の成長を支える環境を整えることが必要です。

子どもにとって家庭は心休まる場所であり、親は最大の理解者です。家庭外では大変な思いをすることもある子どもに、帰ってきた時には抱きしめ愛情を表現するとともに、意見を尊重し、考えを後押しすることが重要です。子どもの未来を考えた時に、まず視座を高めるべきは大人であり、子を持つ親なのです。良き理解者を持つ子どもは、自分自身が子を持つ親となった時に、自分の子どもに対して最大の理解者となることができます。子どもが様々な世界で実体験を積み、明確なビジョンを持って地域を牽引する人財となるためには、環境を整える存在である親が実体験を重ねることも重要です。子どもの最大の理解者である親から無償の愛を受けることによって、子どもは目覚ましい成長を遂げていくのです。

本年度は、家庭では感じることのできない子どもの成長を、親が実感できる機会を創出する中で、親の意識変革を促し、次世代を担う人財を誰一人として取り残さない地域を築きます。そして、地域のリソースを最大限活かし、親の意識変革から子どもの将来の選択肢を増やし、豊かな仙台(まち)の未来を創ります。

【青年の学び舎】

青年会議所とは多様性があり、人によって魅力の感じ方が異なる稀有な組織です。多様性があるからこそ、様々な価値観に触れ自分の考えを見直すチャンスに恵まれています。しかし、全国的にも会員数の減少が続いており、JCI仙台も例外ではありません。私たちはこの現実を悲観的に捉えず、実体験によって自分を磨こうと考える青年が集う組織へと進化するための、絶好の機会と受け止めることが大切です。

仙台(まち)の未来を想い行動することは私たち青年にとって必要不可欠な思考であると考えています。家庭やそれぞれの地域においても、身近な存在のしあわせを実現しようと行動できる人が、より良い仙台(まち)の未来に向けた行動を起こすことができるのです。家庭や仕事に説明責任を果たし、青年会議所の運動や事業に最大限汗を流すことが、組織の発展につながり、ひいては仙台(まち)を発展へと導きます。仙台(まち)の経済発展と会員企業の成長、市民の生活がより豊かになるための政策を掲げ、地域に根差した運動を続けることこそ、組織への信頼獲得と会員拡大につながると信じています。元来、日本の青年会議所は国内経済の充実と、国際経済との提携を目指して始まっています。私たちは青年会議所の会員である前に、企業において経営や様々な立場で仕事をしている経済人なのです。地域発展と経済成長は密接に連動しているからこそ、まずは青年会議所の会員である私たちがマクロとミクロ両面から経済に対する見識を深め、地域づくりに経済的視点をもって取り組むことが重要です。

会員が自己研鑽を積み重ねる場として青年会議所運動を昇華させることによって、青年としての学びを深化させるとともに、私たち自身が進化し、より豊かな仙台(まち)の未来に向けた礎を構築します。

【自分自身の言動を見つめ直す】

個人が情報発信の担い手となり、収益を生み、新たな価値を創造する時代には弊害もあります。発信する側の倫理観によって、誰かの人生を変えてしまうことにもつながるのです。私たちは情報発信の担い手として、メディアリテラシーを身につけ周囲に伝播することにより、組織のプレゼンスを高めることが重要です。

情報技術の急速な発展に伴い、組織のブランディング手法は日々変化しています。地域で運動を展開する組織として変わらないのは、会員一人ひとりが情報発信を行う存在であることであり、常に誰かの目に触れているということを意識しなければなりません。そして、何よりも一人ひとりの言動が、組織のブランディングに直結するのを自覚することが重要です。受け手がどのように捉えるか見極めたうえでの個人の言動が、地域社会における組織のブランド力を高め、信頼を集めます。さらに、情報発信の担い手として様々な地域メディアと連携し、正確な情報共有を行うことで、組織の更なる信用力向上へとつながります。

私たちは情報発信の担い手として適切なメディアリテラシーのもと、会員一人ひとりがモラルを遵守することで、組織の価値を最大化します。

【絶対に諦めない、できることは必ずある】

グローバル化の進展による様々な技術のイノベーションは、物理的かつ心理的に海外との距離を縮めてきました。地域社会においてもグローバル化がより一層進む中、新しい国際交流の形を生み出し、それを推し進めることが、民間外交の担い手である私たちに求められているのです。

青年会議所の醍醐味は、国際組織としてのグローバルネットワークを活かし、会員が国際感覚を養う機会を得られることです。ASPAC(※2)や世界会議(※3)といった国際の機会に参加さえすれば、海外の青年会議所の素晴らしい運動や事業を直に感じることができます。世界中の会員と直接交流ができるのは何よりの魅力であり、得られた経験は必ず自分自身の人生観を変えるはずです。そして、私たちには海外姉妹青年会議所が存在し、国籍の違う会員との交流は身近なものとなっています。海外の会員と言葉の壁を超えた交流を行い、国際青年会議所が描く恒久的世界平和という理想に向けて一体感を抱くことで、自分たちの地域では何ができるのか具体化することができます。各種大会や出向に関わることは、自分の思考をより明確にできる最良の機会となるのです。

周りの環境を理由に、挑戦する前からできない理由を考えるのは、自らの成長を止めることになります。自らの居心地の良い世界を飛び出し、周囲から際立つ存在へと自分自身を成長させ、地域の青年を牽引するのが私たちの役目なのです。新たなグローバル社会の中で意識変革を経験した青年が、更なる民間外交の担い手を生み、思考豊かな人財で溢れる仙台(まち)を実現します。

【おわりに】

私たちの行動によって地域の未来が大きく変わる、そんな時代の岐路に私たちは立っています。このような不確実性の高い時代だからこそ、価値ある理想を掲げ、それを心から信じ、熱意を持って望み、魂を込めて行動することが大切です。

理想を掲げ、それを達成するのは簡単なことではありません。積み重ねてきた歴史を正しく理解し、己の信じる道を貫き行動し続けることこそが、私たちにとっては必要なのです。自分一人ではできないことも、確固たる信念を持った行動が共感を呼び、周囲の行動を変えるのです。

私たちは誰しも親があって生を受けています。親からは命を授かるという最大の恩を受けているのです。親は子どもが何不自由ない生活が送れるようにと、見返りを求めるわけでもなく、子どもの未来のために無償の愛を注ぎます。私たちがそうであったように、次の世代のために無償の愛を注ぐことが、私たちに課された使命です。

親と子の関係に限らず、時代や組織を超えて、私たちは誰かに支えられて生きています。仙台(まち)の持続的発展はまさしく、見返りを求めて誰かを支えるからではなく、無償の愛があって成り立つのです。私たちは過去から続く無償の愛によって生かされていることに感謝するとともに、青年らしく行動し、共感の輪を幾重にも広げ、次世代がより豊かになる仙台(まち)を築き上げます。

※1 LOM中長期ビジョンとは、東日本大震災発災より10年を迎える2021年をゴールに設定し、仙台及び、被災した地域や人々の明るい豊かな社会の実現を目指し、JCI仙台が掲げる運動指針。※2 国際青年会議所は4エリアで構成され、毎年それぞれのエリアの会員が一堂に介する会議が開かれます。アジア・太平洋地域会議はASPAC(Asia PacificArea Conference)の略称で呼ばれています。国際青年会議所の目的推進やJC運動に関するセミナーが行われます。

※3 毎年、原則的に11月第1週に、開催地を変えて開かれる、世界中の青年会議所会員が一堂に介する会議です。会議期間には、組織運営に関する会議、世界会議スローガンに基づくセミナー、会員の資質向上を目的とした各種セミナー、分科会が開催されます。同時に「個人」、「地域社会」、「マネージメント」、「国際性」といった、国際青年会議所の理念を広めるための褒賞事業なども開かれます。