はじめに

 「至誠にして動かざる者は 未(いま)だ之(こ)れ有らざるなり」これは、誠の心をもって尽くせば動かなかった人など今まで誰もいないという意味であり、私の人生における行動規範となっている儒学者、孟子の教えです。

 私は、社会起業家を目指し、地域と共に成長し続ける企業理念の確立と、より良い影響を齎す社会活動の実現において自身に足りないものを模索していた中で、仙台青年会議所(以下、仙台JC)と出会い入会いたしました。そして、誰もがしあわせを共感できる仙台の実現に向けて共にJC運動に励んだメンバーから受けた数々の気づきや学びが、私の価値観を社会性溢れるものに導いてくれました。それは、仙台(まち)の未来を切り開くJC運動にひたむきに取り組む仙台JCメンバー一人ひとりの誠の心に触れることにより、私の心が突き動かされたからです。

 私たちが理想とする仙台(まち)の実現には、誠の心をもって能動的に行動する「至誠の精神」が必要であり、私は、市民一人ひとりが至誠を尽くし、未来を見据えて行動していくことで、誰もがしあわせを共感できる仙台が創造されると確信します。

 本年、私たちは至誠の精神のもと、市民一人ひとりの仙台(まち)に対する想いと行動を新たな時代を切り開く推進力につなげ、誰もがしあわせな未来を想い描くことができる仙台を実現します。

JCの独自性とネットワークが切り開く仙台(まち)の未来

 仙台JCでは、地域や市民の国際意識の高揚を促し、市民と協働した国際化推進事業を継続的に展開してまいりました。そして、都市の国際化を基点とする仙台(まち)の未来を創造するために、2021年にJCI国際アカデミーを仙台の地に誘致することを採択し、開催に向けた歩みとして申請や意識啓蒙に向けた事業を推進してまいりました。JCI国際アカデミーは、世界80ヶ国あまりの国際青年会議所の代表者が集い、国際交流とグローバルネットワーカーとしての自己研鑽を重ねることで、各国との友情を深め、自分の国や地域に留まらない社会発展や世界平和を確立することを目的とした事業です。また、開催地域においては行政、企業、学校等の連携を始め、ホームステイ先や通訳ボランティア等で協力いただく市民の方々に至るまで、地域全体が国際の機会に対し主体的に関わりを持つことで、市民協働による都市の国際化を実現する事業性を有しております。

 私は、昨年、JCI国際アカデミーの事業構築に携わる中で、開催地域全体がJCの世界的ネットワークを通じて世界約80ヶ国からなる事業参加者との友情を育むとともに、市民一人ひとりが心を寄せ、まちの国際化に向けて主体的に行動する姿を目の当たりにし、本事業が仙台の国際化にとって革新的な変化を齎す礎になることを確信しました。

 本年は、行政、企業をはじめとする関係各所に対し、国際アカデミー事業開催により付与される地域益を明示する中で理解と共感を深めるとともに、仙台(まち)の国際化推進に必要不可欠となる協力体制を確立し、JCI国際アカデミー実施に向けた準備を行ってまいります。 

 私たちは、2021年に迎える創立70周年を見据え、仙台(まち)の国際化に関わる主体としての認識を高めるとともに、至誠の精神のもと地域や市民と共に仙台(まち)の国際化を推進することで、誰もがしあわせな未来を想い描くことができる仙台を実現します。

未来につなぐ仙台(まち)のシンボル

 1970年に仙台七夕まつりの前夜祭として始まった「仙台七夕花火祭」は、昨年50回目を迎え、これからも地域の宝として次代に継承することを発信いたしました。本年は未来につなぐ新たな一歩として、第51回仙台七夕花火祭を開催いたします。近年、「仙台七夕花火祭」の開催においては、時代の変遷により生じる打ち上げ環境の変化や、地下鉄東西線を始めとする都市開発による適正な打ち上げ・観覧場所の確保難、複雑化する警備計画の見直しなどの課題が山積しております。「仙台七夕花火祭」の次代への継承において大きな転換期を向かえる本年、私たちは、地域の未来を創造する中で、時代の変化に対応する新たな「仙台七夕花火祭」の基盤を構築する必要があります。

 本年は、「仙台七夕花火祭」の新たな礎を築くために、行政や地域、関係各所との包括的な社会連携協定を結び、地域社会全体として「仙台七夕花火祭」を継承し続ける重要性を広く伝えるとともに、至誠の精神をもって仙台(まち)に寄り添う地域や市民の想いのもと、「仙台七夕花火祭」を誇るべき地域の宝として継承することで、誰もがしあわせな未来を想い描くことができる仙台を実現します。

愛する仙台(まち)の魅力を世界に伝える市民意識

 私たちが住み暮らす仙台は、城下町としての長い歴史の中で育まれた独自の都市文化をもとに、東北の中枢都市としての機能を活かし、都市のグローバル化が推進されてまいりました。近年では、美しい自然環境のもと人々が織りなす創造性と現代文化との融合を図ることで、国内外から訪れる人々を惹きつける四季折々の魅力が見出され、持続的な発展につながる地域資源が創出されております。

 私たちは、仙台(まち)の持続的発展に向けて、世界と仙台(まち)をつなぐ国際交流基盤を創出し、愛する仙台(まち)の魅力を世界に伝える市民意識を高めるとともに、市民協働による地域の国際化を推進することで、世界に愛される仙台(まち)を創造する必要があります。

 本年は、諸外国の方々と市民との交流機会を創出する中で、市民一人ひとりが仙台固有の歴史文化や精神性に対する理解を寄せ、仙台(まち)の優れた地域資源と多様な価値観との調和を図ることで生まれる新たな仙台(まち)の魅力を世界に発信するとともに、仙台(まち)の国際土壌を築く市民力(※1)を育み、市民主体となる民間外交を推進することで、誰もがしあわせな未来を想い描くことができる仙台を実現します。

世界の防災文化の発展に寄与する仙台(まち)

 仙台JCは、2011年に掲げた「IMAGE2021’S SENDAI(※2)」に込められた想いをもとに、東日本大震災の発災から10年にあたる2021年を見据え、しあわせを共感できる仙台の実現に向けて策定されたLOM中長期ビジョン(※3)を行動指針とし、個人・社会・国際それぞれの分野における市民力の向上と仙台(まち)の持続的発展に向けたJC運動を展開してまいりました。

 私たちは、誰もがしあわせを共感できる仙台を実現するために、震災時に世界各国から寄せられた想いに対する感謝を伝え続けるとともに、震災の経験や復興知見のもと築き上げた地域防災モデルを仙台(まち)の誇るべき防災文化として確立し、復興に向けて前進する地域や市民の姿と共に世界に発信することで、仙台(まち)の未来を築いていかなくてはなりません。

 本年は、仙台(まち)の防災文化を市民共通の地域資源として共有する中で、至誠の精神のもと市民一人ひとりの防災意識の向上を図り、東北全体の復興に寄せられた想いに対する感謝を世界に示すとともに、仙台の地で開催される宮城ブロック大会において、県内11の青年会議所との協働のもと、宮城県全域の防災文化の向上と世界に向けて感謝の想いを伝える機会を創出することで、誰もがしあわせな未来を想い描くことができる仙台を実現します。

国際社会をたくましく生きる子どもたちの育成

 社会全体としてグローバル化が進み、地域社会の様々な面で持続可能な発展に向けた国際協力が必要とされる現代においては、国際理解に関する学習の一環として、小学校教育の学習指導要領に外国語会話が盛り込まれ、諸外国の生活や文化に慣れ親しむことを目的とする体験学習が始まっております。また、グローバル社会への転換期を向かえ、私たちが住み暮らす仙台(まち)においても国内外を結ぶ交通ネットワークの発達と共に都市の国際化が推進され、子どもたちを取り巻く状況は刻々と国際社会への順応が必要不可欠なものへと変化しております。

 このような時代において、私たちは、仙台(まち)の未来の創造においてかけがえのない存在となる子どもたちの国際意識を醸成するとともに、国際交流の中で世界の人々との相互理解を深めることで、国際社会をたくましく生きる力を養う必要があります。

 本年は、仙台JCがこれまで築き上げてきた国際交流基盤を活かし、子どもたち一人ひとりが国際社会の一員として民間外交に関わる体験を通じて、自己肯定感を高める機会を創出するとともに、親や地域の大人が子どもたちの豊かな社会性と人間性を育む意識を高め、地域一体となり仙台(まち)の未来の礎となる運動を実践することで、誰もがしあわせな未来を想い描くことができる仙台を実現します。

仙台(まち)の未来を想い描き、新たな時代を切り開く人財の育成

 人口減少社会への推移と人口構成の変化により、地域を担う人財が減少傾向にある近年、20歳から40歳までの限られた時間の中で活動するJCにおいても平均在籍年数の短期化による組織理念を体得する機会の減少が懸念されております。また、女性会員比率8%と先進諸国におけるJCに大きく後れをとっている現状の改善を図り、新たな価値観のもと、組織の未来を切り開く人財を募ることが喫緊の課題となっております。

 地域に活力を与える人財の育成が求められる今、私たちは、地域発展に寄与する組織に対する共感を拡げるとともに、志高く品格を兼ね備えた会員を募ることで、会員一人ひとりが至誠をもって地域を牽引する組織へと進化しなくてはなりません。

 本年は、地域の未来を担う人財に対しJC運動の存在意義を発信し、職種や性別に関わらず個性と能力を十分に発揮できる会員を募るとともに、至誠の精神のもと仙台(まち)の未来を想い描き率先して行動する会員意識を育み、仙台(まち)を持続的発展に導く組織に進化することで、誰もがしあわせな未来を想い描くことができる仙台を実現します。

JCの独自性とネットワークを活かし成長する青年リーダー

 社会のグローバル化に伴い、世界各国との交流が推進される近年において、私たちは国際組織の一員として民間外交の一翼を担う中で、JAYCEEとしての成長を促進するとともに、JCのスケールメリットを活かし、地域の発展に寄与する使命があります。

 仙台JCは、姉妹JCであるパラニャーケパンバドJC(フィリピン)、アイランドJC(香港)と継続的に交流しており、それ以外にも海外派遣事業等を通じて、世界各国のJCと未来を見据えた様々な交流を深めてまいりました。また、会員に付与されるJCI世界会議やASPAC等の国際の機会は、JAYCEEだからこそ享受できる国際交流と学びの機会であると考えます。私たちは、国際組織の特色を活かし、グローバルな視点を持ち、地域を牽引する人財を育むとともに、国内外の多様な価値観に触れる中で得た経験や知見を仙台(まち)の発展に結び付ける必要があります。

 本年は、グローバルな視点で地域を牽引する人財を育成するために、JCI世界会議横浜大会において、民間外交の一翼を担う国際組織メンバーとしての成長の機会を創出するとともに、JCIが開催する各種大会を通じて得た気づきや学びを地域発展に結び付ける会員意識を育むことで、誰もがしあわせな未来を想い描くことができる仙台を実現します。

市民の共感からなる仙台JCのブランディング確立

 情報化社会に伴う通信技術の進化により、情報発信方法が多様に拡がる現代において、私たちは、会員一人ひとりが時代に即した広報手法を学び、組織広報の活性を図ることで、仙台(まち)の課題解決に対し共に向き合い協働する市民意識の高揚を提唱し続けるとともに、組織が行う事業の社会的意義を効果的に発信することで、組織ブランディングを確立し、地域や市民からの共感を拡げる必要があります。

 本年は、事業単位の情報発信ガイドラインを明確にし、様々なソーシャルメディア等を活用した効果的な情報発信基盤のもと、JC運動に対する地域や市民の協働を促す広報戦略を実践するとともに、会員一人ひとりがJC運動への理解を深め、組織力を活かした情報発信を実現します。私たちは、至誠の精神のもと地域や市民が一体となり仙台(まち)の未来を創造する市民意識の高揚を促すことで、誰もがしあわせな未来を想い描くことができる仙台を実現します。

結びに

 私たちが理想とする仙台(まち)の未来は、至誠が溢れる市民一人ひとりの仙台(まち)に対する強い想いと確かな行動力によって創出されます。次代を想い、今を生きる子どもたちの未来のために新たな時代を切り開こうとする人々の勇気と情熱によってこの仙台(まち)が創造されるのです。

Work Togather to Create the Future.
「我々は、自らの勇気ある一歩が仙台(まち)の未来を創造することを信じ、市民一人ひとりの成長と行動を地域の発展につなげ、至誠の精神のもと市民協働による新たな時代を切り開こう。」

 本年、仙台JCは、自らの行動を基点とする仙台(まち)の発展を牽引し、共に未来を切り開く市民意識を育むとともに、市民一人ひとりの強い想いと確かな行動力を仙台(まち)の発展につなげ、至誠の精神のもと、誰もがしあわせな未来を想い描くことができる仙台を実現します。
 

※1 市民力とは、市民一人ひとりが積極的に人とのつながりを持ち、能動的に地域課題の解決に取り組む力(仙台JCLOM中長期ビジョン引用)

※2 「IMAGE2021’S SENDAI」とは、震災からの復興を成し遂げ、仙台(まち)の発展に向けて当事者意識を持ち、気概を持って行動していく覚悟の証として2011年に仙台JCが掲げたフラッグ(仙台JCLOM中長期ビジョン引用)

※3 LOM中長期ビジョンとは、東日本大震災発災より10年を迎える2021年をゴールに設定し、仙台及び、被災した地域や人々の明るい豊かな社会の実現を目指し、仙台JCが掲げる運動指針(仙台JCLOM中長期ビジョン引用)